景色を一変させる馬の祭りは心に焼き付くぞ

小さな谷あいに広がる道、遠くから聞こえる太鼓、自分はドキドキ止まらなかった。眼前には一列に並んだ射手達。

どこにいるかと言えば、茨城県の馬の祭りへ来た訳よ。風を切る音や呼吸、蹄が砂を踏む度に伝わる振動が、まるで大きなハーモニーを奏でているみたい。

「そろそろね」大人がひそひそ教えてくれた時、僕は小さく身を乗り出す。かすかな緊張で指先がヒリヒリする感覚。シーンとした状況に笛が鳴ると、一瞬にして景色が動く。

スタートラインを越えれば、砂埃と共に走路から振動が届き、息を呑む間に矢は羽ばたき、吹き飛ぶ的板がヒラリと舞った。

僕が見にきたやつは、茨城県の馬の祭りだと聞いた時、まだ頭ん中には分からない漢字ばかりだったけれど、はっきりと光景が心に焼きつく。

終わりが近づく頃、静かな余韻をまとい、揺れる木々の影がまるで見守るように、ゆらりと揺れる。

帰り道、何度も後ろを振り返り、まだ耳に残るリズムを確かめる。茨城県の馬の祭り会場に立っていた時間が、素朴だけれど一番大切。